ドット絵の定義

なにをもってドット絵と呼ぶべきでしょうか?

ドット絵の話題で初っ端から荒れそうなチョイスですが、最初に決めておかないと軸がぶれそうなので、やります。

ドット絵とはなにか、どんな条件を満たせばドット絵と呼べるのか、最近は議論を避け「あなたがドット絵だと思うものがドット絵だよ」などとごまかす向きもありますが、キッチリとした定義が必要でしょう。少なくとも私はそう思います。

ドット絵の定義

ドット絵とは「非可逆圧縮されていない、インデックスカラーで描かれたラスター形式の2DCG」である。

これをこのブログでのドット絵の定義とします。
実は以前からこの定義は各所で主張しているのですが、まあ広まってはいません。改めてこの機会に広まってくれると嬉しいですね。

逐語解説

専門用語、というほどでもないかもしれませんが、耳慣れない言葉が混じっていると思いますのでひとつずつ解説していきます。

まず、CGはコンピューターグラフィックスの略で、コンピューター上で描かれた画像全般のことを表します。

2Dは二次元、つまり平面の画像ということです。立体的なものは3DCGですね。

ラスター形式とは2DCGのうち、色のついた小さな四角形=画素の集合で画像を表現する形式のことです。
これとは別にベクター形式というものもあり、そちらは点の座標や点同士の接続情報などから図形を再現する形式です。

インデックスカラーとは、パレットと呼ばれる色を定義したテーブルを参照することで画素の色を決定する形式のことです。
色情報を画素ごとに直接保持している形式はトゥルーカラーと呼ばれます。

非可逆圧縮とは、容量削減を目的としてデータを圧縮する際に一部の情報を破棄することで圧縮効率を上げる方式のことです。この方式で圧縮されたデータは展開しても完全にもとの状態には戻りません。その反対を可逆圧縮といい、こちらは展開すればもとの状態に戻ります。
非可逆圧縮の画像形式にはJPEG、可逆圧縮の画像形式にはGIFやPNGがあります。

「非可逆圧縮されていない、インデックスカラーで描かれたラスター形式の2DCG」の意味がおわかりいただけたでしょうか?

人によっては考える定義がこれより広かったり狭かったりすると思いますが、私はこの定義が最も広い範囲を適切にカバーするものと信じています。

ドット絵とドット絵風の違い

それではこの定義に含まれない一部のドット絵”風”のものについても取り上げましょう。

たとえば「アイロンビーズでドット絵を作りました」というのはよく見かけます。が、それはドット絵ではありません。なぜならそもそもCGですらないからです。
ドット絵の本領はコンピューターの中、もっと言えばゲームの中です。ゲームの中で動いてこそのドット絵であると私は考えます。ゆえにドット絵とはコンピューター上にデータがなければならず、ビーズでいくら再現してもそれはドット絵ということにはならないのです。

ビーズ以外にも、基本的に印刷されたものは定義上ドット絵ではありません。アクリルのスタンドやキーホルダーもそうですし、ドット絵の画集があったとしてもそれは「ドット絵の印刷物」であってドット絵そのものではありません。

油絵で例えてみましょう。油絵とは油絵の具で描かれた絵のことであり、いくらソフトウェア上で油絵のタッチを再現していたとしてもそれはCGです。
また、本物の油絵を写真に撮ったとしたらそれは「油絵の写真」であって油絵そのものではありません。

もちろん、ドット絵風のものの存在自体を否定するつもりはありません。しかし、ドット絵風であるだけのものを「ドット絵です」と言い切って出されることには抵抗感を覚えます。
ドット絵のようであっても定義から外れるものはドット絵”風”と但書をつけておいてほしいですね。

AIにドット絵は描けるか

最近はイラスト生成AIというのが流行っているようですが、結論から言って現状AIにドット絵は描けません。描けるのはあくまでドット絵風のイラストです。
なぜなら、それらの画像はインデックスカラーではないであろうからです。私の定義はAI絵が流行るよりずっと前に考案したものですが、こういうケースに当てはまってくれるとやはり間違っていなかったのだと思えます。
将来的にインデックスカラーでパレットアニメーションまでする完全無欠のドット絵をAIが生成してくるかもしれませんが、今はまだその時ではありません。

反論受付中

「お前は何を言ってるんだ、これこそが真のドット絵の定義だ」という反論がありましたら、ぜひコメントでどうぞ。私自身これよりも適切なドット絵の定義があればそちらに転向したいところです。

以上です
ここまでお読みいただきありがとうございました。

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