「麺処きずな」炎上問題について(追記あり)

構図がわかりにくい

先日来「麺処きずな」が炎上しています。
構図がわかりにくいので、少し整理してみましょう。

まず、紲星あかりの権利者は結月ゆかりと同じくボカロマケッツです。

VOCALOMAKETS
「何かワクワクするような、面白い事」をしたいクリエイターの集まりです。結月ゆかり・紲星あかりをプロデュースしています。

そして、そのボカロマケッツは企業による二次創作での商業行為に寛容…というか界隈を盛り上げるために奨励している節があり、これまでにも様々な二次創作グッズが各社から発売されています。

「麺処きずな」もそうした二次創作企画のひとつで、内容としては「紲星あかりが店主を務める架空のラーメン屋」という設定でラーメンに関するグッズを販売するというものでした。
企画運営の主体は株式会社HIKEという会社です。

お知らせ | HIKE
音声合成ソフトキャラクター「紲星あかり」が架空のラーメン屋店主に!?『麺処きずな』オリジナルグッズ発売決定!

そして、その「麺処きずな」がある動画投稿者とコラボしてさらなるグッズ販売や実際のラーメン店での特別メニュー提供などを始めました。

炎上したのはこのコラボの部分です。
コラボした動画投稿者は、紲星あかりの声と立ち絵を使ってニンニクの大量摂取を行うという内容のグルメ系動画を投稿しています。
コラボ商品には紲星あかりのイラストが使用されたわけですが、このイラストが動画で使用している立ち絵と酷似したものであったのが問題でした。イラストは立ち絵作者とは別の人物によって描かれたものですが、両者を混同する人が続出するほどそっくりです。
元の立ち絵が規約上商用利用が禁止されていたために、それを回避しようとして別人に似たイラストを依頼したという経緯のようで、元の立ち絵作者に企画の話は全く通っていなかったそうです。

合成音声動画に立ち絵は欠かせません。そして絵が描けない動画投稿者にとっては立ち絵を提供してくれる作者さんというのは大変にありがたい存在です。
にも関わらず、普段動画でさんざん使い倒している立ち絵の作者さんになんの断りもなく、その絵柄に寄せたイラストを別人に依頼して金銭の発生するグッズ販売に使用するというのは非常に問題のある行為と言わざるを得ないでしょう。

件の動画投稿者は以前からなにかと問題のある言動を指摘されていた人物のようで、それが今回に至って爆発したという感じでしょうか。

しかし厄介なのは、絵柄盗用とでも言うべきこの件の主体に動画投稿者本人や企画運営のHIKEだけでなく権利元であるボカロマケッツも含まれるのではないかということです。

ボカロマケッツがコラボ部分も含めた「麺処きずな」の企画全体を好意的に後押ししていたのは事実ですし、代表がX(旧Twitter)でこの件の批判者を煽るような投稿もしていました。
もともと権利元と二次創作者である動画投稿者の距離が近い界隈ではありますが、件の動画投稿者とボカロマケッツ代表は特に懇意にしていたようで、仲間意識のある相手を擁護したいと思っているのかもしれません。

この状況は非常に危険です。
権利者の厚意と二次創作者の善意、両者の信頼関係によって成立している合成音声文化において、権利者が特定の二次創作者に肩入れして別の二次創作者をないがしろにするようなことをすれば、信頼関係は破綻し二次創作者は離れ、文化の衰退を招くでしょう。特にボカロマケッツは結月ゆかりの権利者でもあるので、その影響は計り知れません。
実際、既に立ち絵を非公開にしたという人も出ています。
ボカロマケッツには早急に今回の件についての具体的な釈明と、今後同様のことが発生しないようにするための対策を発表してほしいところです。

ここから戯言

さて、そもそも二次創作が主である合成音声文化において、権利者が営利企業であるという点が今回のような問題を起こす遠因になったと考えることもできます。
実現可能性はともかく、たとえば結月ゆかりと紲星あかりの権利を管理する非営利団体(仮称:月あかり財団)があり、関連企業がパトロンとして支援し、大勢のファンが寄付をして成り立っていれば、今回のようなことは起こらなかったのではないでしょうか。
合成音声関連の製品開発にクラウドファンディングが多用されている状況も含めて考えると、権利者が営利企業である必然性があまりないように思えて仕方ありません。

以上です
ここまでお読みいただきありがとうございました。
よろしければ購読をおねがいいたします。

(2/10追記)

ボカロマケッツから声明が出ましたね。

「魅惑のガーリック あかり」に関するお詫び【2/5追記】
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声明が出てくるまで思いの外時間がかかり、また五月雨式であったため追記のタイミングを逸していました。

読んだ所感としては、件の動画投稿者が悪いのは大前提として、ボカロマケッツの運営としての能力に疑問符がつくものでした。
動画投稿者による「魅惑のガーリック あかり」販促へのキャラクター無断使用を事後契約で追認しようとする姿勢だとか、問題のイラストについて絵柄の模倣であり元の作者さんに許可されていないものであるということを見抜けなかったことだとか、色々ありますが一番はコラボ企画自体を止められていないところでしょうか。株式会社HIKEによるグッズの受注は続いていますし、コラボ先のラーメン屋ではイラスト入りの器が使われ続けています。立ち絵作者さんに「ロイヤリティの支払い」を提案したことからもコラボ企画は止められない前提であるということがうかがえます。
ボカロマケッツというかその経営母体は小さな会社のようですから、企業同士の力関係でそうなっているのだとは思いますが、自社のキャラクターをいいように使われて発生した問題の謝罪だけさせられている状況は見ていて非常に不安を掻き立てられます。

結月ゆかりと紲星あかりの生みの親であり今まではきちんと管理してきただろうということを考慮に入れたとしても、今後のことを考えればどこかしっかりした大きな企業に権利を譲渡することを考えてもらえないかなと思う次第です。

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