「レイヤ」というメディアの提唱

戯言というか大言壮語というか

筆者は、現状ビジュアルノベルやキネティックノベルなどと呼ばれているタイプの”ゲーム”についてそのポテンシャルを高く評価するとともに、ゲームという枠組みで扱われていることへの強い不満を持っています。
その種の”ゲーム”はしばしば「ゲームと呼べるものなのか?」という議論の槍玉に挙げられてきました。選択肢によるルート分岐があればまだしも、それすら存在しない一本道のお話を読み進めていくだけの作品の場合そこにはゲーム性というものが備わっていないという主張があり、筆者もそれについて大いに賛同します。
ゲームという形態で流通しているとはいえ、作中での操作はクリックして文章を進めていくだけですから、体験としては電子書籍に近いものです。そして電子書籍をゲームと呼ぶ人はいないでしょう。
しかし、だから他のゲームより劣っているなどという主張をしたいわけではありません。その種の作品群はゲームとは別種の「背景画像やキャラクターの立ち絵、BGMや効果音などの視聴覚的演出とともに文章を読み進めていくタイプの複合的なデジタルメディア」として捉え直すべきものであると考えています。
つまりむしろ、マンガ・アニメ・ゲームといった各種メディアと同列の存在に格上げするべきだという主張です。

そのメディアのために筆者は「レイヤ」という呼称を考案しました。当初はレイヤードノベル(Layered Novel)としていましたが、ノベルとついているとビジュアルノベルやキネティックノベルにイメージが引きずられるので削りました。
Layered(層状の)というのは画像や文章が層のように重なった画面構成に由来しており、AnimationがアニメになったようにLayeredをレイヤと呼ぶことで独立したひとつのメディアであると印象づける試みです。

ここでは今後「選択肢によるルート分岐等のゲーム性が存在しないタイプのビジュアルノベル作品」を指して「レイヤ」と呼称します。

「レイヤ」をゲームとは別のメディアとして扱うことは様々なメリットを生むと筆者は考えています。
たとえば制作コストです。「レイヤ」は現状ではゲームとして作られていますが、いくらゲーム性がないとはいえ文章や画像を破綻なく表示するシステムや既読管理等の細かい機能を1から構築するのは大変ですし、制作主体それぞれが別々に作っていては非効率的です。ゲームではなく電子書籍に近いものと捉え直し、共通のデータ形式とそれに合わせた制作・閲覧環境を整えればコストはかなり削減できるでしょう。現状でもいわゆる”ノベルゲーム制作ツール”はありますが、選択肢等の要素も省いてしまえばよりスリム化できるはずです。
消費者側からしても、ほとんど同じシステムの”ゲーム”を都度購入するよりビューアに読み込ませるデータを購入するという形式の方が手軽であろうと思われます。
そのようにして「ゲーム」と「レイヤ」で住み分けがなされれば、インタラクティブなシステムによるマルチエンディングを期待したゲーマーが一本道シナリオに不評レビューを投稿することはなくなり、今までゲーム内の一ジャンルであった「レイヤ」にゲーマーとは別のアニメファンに近い愛好者集団が形成されるでしょう。
また「レイヤ」は現状美少女ゲームの文脈に強く影響を受けていますが、ゲームという枠組みから解放されればもっと一般受けする内容の作品も増えるはずです。極端な話、実用書の類がわかりやすい図解入りのレイヤ版として作られることもあるかもしれません。学習マンガならぬ学習レイヤです。

もちろんここまで書いたことは戯言というか大言壮語というか、夢物語に近いものです。
マンガやアニメと同レベルのメディアという枠組みを作り出すのは個人の思いつきでは到底無理がある試みでしょう。
そもそもそれの実現に何が必要でしょうか。共通のデータ形式とその制作ツール、ビューア、あとは専用の配信プラットフォームもほしいです。筆者個人でできる範囲を超えていますね。
それでもまあ、ライフワークとして取り組むことにやぶさかではありません。
近年のスマートフォンや電子書籍の普及により「端末の画面をクリック/タップして話を読み進める」という行為のハードルはかなり下がっています。シナリオを読ませるタイプのスマホゲームに対して「ゲーム部分が邪魔、シナリオだけ読ませてくれ」なんていう要望もあるようですし、レイヤ的なものへの需要そのものは決して小さくはないと思うのです。
そうであるなら、いつの日かマンガやアニメと同じように扱われる日を夢見てコツコツ活動していくのは楽しそうでもあります。

とりあえずは以前キネティックノベル用にと作っていたマークアップ言語仕様「KNML」をレイヤ用に「LML」と改名してみました。

GitHub - ruine0213/LML: Layered-novel Markup Language
Layered-novel Markup Language. Contribute to ruine0213/LML development by creating an account on GitHub.

中身は変わっておらずまだまだドラフト版ですが、今後着手する予定のビューア制作とあわせて徐々に洗練させていきたいと考えています。

以上です
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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