ニコニコ動画復旧に寄せて
ニコニコ動画が2個必要だ
6月にサイバー攻撃を受け、サービスを停止していたニコニコが先日ようやく一部機能を失いながらも仮復旧しました。
記事執筆時点で未だに利用できない機能は多いですが、ユーザーが動画を投稿し、それを視聴できるようになったという点で一区切りといったところでしょうか。ここまでの作業及び現在進行系で完全復旧にあたっているエンジニアの皆さんはお疲れ様です。
今回の件で「ニコニコがなくて困る」「やっぱりニコニコは必要だったんだ」というような声がSNS上で多数見られましたが、個人的に主張したいのはむしろ「代替となる国産サービスの不存在」という点です。
ご存知の通りニコニコは動画共有を核とした様々なサービスの集合体です。しかしそうした総合的なサービスはおろか動画共有単体に絞ってみても国産大手の代替サービスというものが存在しません。
通信速度が向上し、映画やアニメなどの動画配信サービスがいくつも存在しているにもかかわらず、ユーザーが自分で作った動画を投稿し共有するという形のサービスとなるとニコニコ動画しかない、という状況なのです。
今回のように長期間サービスが停止すれば代替のないユーザーは著しい不便を被ります。さらに、今回は無事データが復旧できたから良いようなもののもし復旧不可能・サービス終了となっていれば蓄積されてきたユーザー生成コンテンツの喪失は大きな文化的損失になっていたことでしょう。
YoutubeやTiktokはどうなんだといえば、あれらは海外サービスであって、特に後者はショート動画ですからなかなか完全な代替ということにはできません。
競合と言えるレベルの、代替となる国産サービスがもうひとつ必要ではないでしょうか。
仮にニコニコと同程度の動画共有、イラスト共有その他クリエイター支援等の機能を備え、例えば差別化のためにモデレーションをきつめにした「お行儀のいい」サービスがあれば単にニコニコのバックアップとしてだけでなくニコニコ特有のノリが苦手な人の受け皿にもなり得ます。
競合サービスが別にあればニコニコ自体もよりよいサービスを提供しようとするはずです。その相互作用で日本の動画共有サービスは品質高く保たれることでしょう。
問題はニコニコの競合になるほどの規模でサービスを提供する資金と気概を持った日本企業がどこにあるのかということですが、個人的感覚で勝手に候補として挙げるならバンダイナムコとかDMMとかは自社で既に動画配信サービスをやっていることもあっていけそうな気がしています。
ニコニコが頑張っている、それは結構なことです。しかしそれを応援することと競合の存在を望むことは矛盾しません。むしろニコニコだけにインターネット動画文化をすべて背負わせている現状は不健全と言えます。
非中央集権的な理想を言えばPeertubeのようなソフトウェアを使って各個人が動画をホストするのが一番なのですが、現状コストや技術面で現実的ではないでしょう。だとするならば、少なくとももう一ヶ所日本企業の運営による動画共有サービスが存在しておくべきではないかと考える次第です。
以上です
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