「ノウアスフィアの開墾」を読んで

「ログホラか?」と思った人にこそ読んでほしい

「伽藍とバザール」を読んだ勢いで同じエリック・レイモンドの続編的論文である「ノウアスフィアの開墾」も読みました。

青空文庫で日本語版が読めます。

ノウアスフィアの開墾 (レイモンド エリック)

そもノウアスフィアとはなんぞやというところですが、これはどうやらバイオスフィア(生物圏)から発展させた考え方で、人類の知識や精神といった面の発達によって発生する新たな圏であるということのようです。
表現を変えると、知的活動によって広がる仮想的な領域とでも言うのでしょうか。
私自身こうして書いていてあまり理解できていないのですが、哲学的な概念なのでそういうものなのでしょう。

ともあれ本文を読んでいて一番心を動かされたのは、オープンソースプロジェクトにおける所有権についての考え方の部分です。文中では英米式慣習法における土地の所有と似ているという指摘がされていますが、私はなんとなく中世的な自力救済社会っぽさを感じました。インターネットという電子の海において、オープンソースプロジェクトには現代的法治国家のような確固たる庇護者は存在せず、あるのは自分の能力と世間の目だけなのです。
しかし、だからこそハッカーたちは世間の目が自分を守るのだと言わんばかりに、様々な「オープンソースプロジェクトかくあるべし」というような風潮を作り出しています。それによってときには独裁者になりうるプロジェクトの所有者に対して常に善良であれという圧力をかけているのです。このあたりも中世の騎士道精神のような概念に似ている気がします。

かと思えば、四半世紀前に書かれたとは思えないいかにもSNS時代的な「評判ゲーム」なる概念も出てきます。
この概念はいかにも文化人類学的で、オープンソースソフトウェアに関する論文を読んでいたはずなのに文化人類学について考えさせられるというのはすごい話ですが、ソフトウェアを開発するのも人間なので行き着くときは行き着くのでしょう。

とにかく読んでほしいので、あまり語ると読んだときの感動が薄れるかもしれないのでこの辺にしておきますが、非常に示唆に富んだ論文ですので「伽藍とバザール」とあわせて是非読んでみてください。

以上です
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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