「伽藍とバザール」を読んで
恥ずかしながら読んだことがありませんでした
「伽藍とバザール」といえば、エリック・レイモンドによって書かれ1999年に出版された非常に有名なオープンソースソフトウェアに関する論文です。
オープンソースソフトウェアに関わりを持つ人間であれば(年齢にはよるものの)大抵は読んだことがあるだろうと思われるこの論文を、私は読んだことがありませんでした。
特定ソフトの開発に参加こそしていませんが、普段オープンソースソフトウェアの類をことあるごとに称賛し、それらを使用することを奨励するような発言を繰り返している身で「伽藍とバザール」を読んだことがないというのは、ちょっと格好がつきません。
Mastodon上での会話でそのことに気付かされ、これはいけないと思いさっそく読んでみました。
日本語版では40ページほどのそう長くない論文でした。
概要としては、従来のオープンソースソフトウェアがひとりもしくは少人数の閉鎖的な体制で作られ一定期間ごとにソースコードが公開されていたのに対し、Linuxは常にソースコードを公開した状態で外部からのデバッグや機能追加の要望を受け入れる体制を構築して成功したという点を、両者を「伽藍方式」「バザール方式」と名付けて対比しているものです。
著者自らもfetchmailというプロジェクトをLinuxと同じ「バザール方式」で成功に導いたという実体験が書かれており、全体の論調はバザール方式を支持するものです。ただし、プロジェクトをゼロから立ち上げる時には不向きであることや、リーダーとなる人物に高いコミュニケーション能力が要求されることなども述べられています。
現代でこそバザール方式はGitHubなどを利用してごく当たり前に、というかより洗練された形で行われているオープンソースソフトウェアの開発方式ですが、それを四半世紀前にLinuxという成功例から抽出し、実践し、こうして論文としてまとめていたというのは驚嘆に値することでしょう。
また、個人的にすごいと思ったのはこの論文自体が「スッと読めた」ことです。内容を理解し、受け入れることに抵抗がありませんでした。それはつまり、現代に至るまでこの論文で書かれた「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない」などの原理原則は変わらず存在しているということであり、私が読んだことのあるオープンソースソフトウェアに関する記事の多くがこの論文を前提としているということなのでしょう。
「伽藍とバザール」はOPLというライセンスの下でインターネット上に公開されており、日本語版は青空文庫で読むことができます。
今まで読んでこなかったことは大いに悔やまれますが、今になって読んだからこそ感じる当時から現代までの「答え合わせ感」のようなものもありましたので、もしオープンソースソフトウェアに興味があってまだ読んでいないという人がいればぜひ読んでみてほしいと思います。
以上です
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